今月の初め、北海道出張から帰ってくると、青果流通業に携わるものとして、ひとつショッキングなニュースがありました。JAかみつがのとちおとめ出荷停止のニュースです。保健所の検査により、農薬が残留基準を超え、同農協に所属するすべてのいちご農家のいちごが出荷停止になり、廃棄されたとのこと。179戸に及ぶ農家さんのいちごが流通することなく廃棄されたのです。「消費者志向」のご時世ではありますが、この苦渋に満ちた決断を即座に下し、発表したJAかみつがさんに敬意を表さずにはいられませんでした。同時にその決定に従った農家さんたちの思いはどんなだったか。難しい想像ではありません。
二週間たった今月16日、179戸の農家さんのうち、4戸の農家さんが特定され、175戸の出荷が再開したと聞きました。少し安堵しましたが、まだ私の周りのスーパーには栃木産のいちごは見当たりません。
農薬はとっても難しい問題です。農薬を与えずに育てることができれば、それに越したことはありません。でも人間が病気をするのと同じで、野菜やだもの、特にくだものは病気にかかりやすいです。それを放っておけば畑全体に広がり、全滅します。人間が病気を治すために薬を飲むのと同じように、野菜も病気を治すために薬を与えなくてはいけません。これが「農薬」です。
「農薬」と聞いただけで安直に「危険」と思うのはどうなのかなあ、と私は思っています。消費者が作物を食べるときよりも、それよりもずっとはるかに、農薬を実際にまいている農家さんの方が危険です。私が産地に行って会った農家さんは、とっても真剣に、ある意味、過敏に農薬を扱っていました。すべて自分に帰ってくるんですから。
農薬を使わずに育てることができれば、それ以上のことはありません。
実際りょくけんでも、使わずに済むように、健康な樹ができるように日々努力しています。
それでも、「農薬」と聞いただけで、「悪」と思うような、そんな方程式はそろそろなくならないかな、と思う今日この頃なのでした。