携帯を片手に小走りでいらした方。
片山さんに違いない。
従業員の女性の方が、無事に車に乗り込み、駐車スペースを出るのを確認した後、私も再度、駐車し、車を降りた。
「こんにちはー!」
「こんにちは。」
歳は私と近い。
やや小柄だけれど、身のこなしが軽い。
「一通り見られますかー?」
「はい、ぜひ。」
「ちょっと、今うるさいですけど、、、」
大きな施設に入ると、トンカチで何か固いものをたたていている。
後で分かったことだが、使用したオガクズをトンカチで叩き割り、粉々にしていた。
カンカンと大きな音が立っている中、施設内を順番に案内していただいた。
まずはオガクズを”瓶”に詰める場所。
「壁の向こうでオガクズがあってそれがここに流れてきて、瓶に詰められます。壁で仕切っているのは、単純に、木くずが舞い上がって大変だからです。」
機械化は進んでいて、この区画には人がいない。
その対面にあるのが、殺菌部屋。
殺菌と言っても、農薬ではない。
圧力釜のようなものの中に入れて、圧力をかけながら気温を上げていく。
私が見た時には118度であったが、設定は121度だそうで、そこまで実際上げて、オガクズの殺菌を行う。
殺菌された瓶の中に、植菌され、培養室へ。
培養室の扉を上げると、瓶が高く積まれたパレットの塔が私を迎えてくれた。
天井の高さは4mあるだろうか。
そして、ちょっと暖かい。
「ちょっと暖かいのわかります? これ、菌が出している熱なんですよ。そうだなあ、20度くらいになってるかな。」
「分かります、分かります。しかしずいぶんとたくさん入ってますねえ。」
「ぶなしめじは、培養期間が長くて、90日は培養させるんです。だからこのくらいのスペースでこのくらい詰めて、回していかないいけないんです。寝ている期間が長い、ていうか。」
一つ一つのパレットに対して、作業データが記入してあり、いつ菌を植えて、いつ入庫したかなどが記載されていた。
施設の真ん中に一本、廊下のように道があり、その左側を一通り回った。
廊下の向かい側の部屋はすべて生育スペース。
ドアが無数にあり、開くと、ぶなしめじの棚が両脇に立ち並ぶ。
「芽が出てからだいたい20日~30日で十分な大きさになって、収穫になります。」
「じゃあ、合わせて120日かかるんですね。」
かなり長い。
中の気温は低い。
「これ、LEDですね。」
中の電灯と5段ある棚の電灯がLEDなのに驚き、声をかけると
「そう、そうなんですよ。ただ、室内の電灯をLEDにしたら、気温が上がらなくなってしまって。。。空調をより使うようになってしまって、何が何だか。。一番下の段だけ、蛍光灯を残しましたよ。」
「空調…。」
「はい、施設で作るから周年できるんですが、ぶなしめじも呼吸をするので、換気して、酸素を与えないといけないんです。でも真夏に空気を入れたら、当たり前ですけど、気温は上がるし、真冬に入れれば、気温が下がります。だから空調はほぼ一年中使うわけです。」
「え。じゃあ、もしかして一番経費的にかかるのは…? もしかして…?」
「はい、電気代です。」
「じゃあ、今、めっちゃ大変じゃないですかっ?」
「はい、大変です。親父も、請求書を見て、こんなの見たことないぞ。って驚いてました。」
「そうですか…」
「コロナでも困ったのに、このウクライナの戦争の影響ったらないですね…。」
「本当ですよね。。まさかこんなことが起こるなんてね。。」