私がりょくけんと関わり始めた頃、すなわちユニクロのSKIP入社当時、パインの主力は、”芳香パイン”だった。
香りが強い品種で、寒さに弱いため、5~6月頃に出る。
その前に出る、寒さに強い補完的な品種が、台農17号だった。
芳香パインのほうが小玉で香りが強い。
一玉、8畳の部屋においておけば、香りでいっぱいになるほど、香りが強いパイン。
やや白っぽい果肉だった。 |
ただ、りょくけんさんやSKIPの諸先輩方が、そのように褒め称える中、私は一向に、美味しい芳香パインに出会えなかった。
お客様から頂くのは、中が黒かったとか、透き通っていて傷んでるのは?というお声ばかりだった。
病気。 |
ある程度のカビは大丈夫だが、こちらは中まで行ってしまったカビ。 |
「水晶果」発酵して風味が悪くなっていることがある。 |
蜜に当たる部分が茶色になる。このくらいであれば大丈夫。 |
むしろ、補完的な台農17号のほうが、品質が安定し、食べやすいし美味しい。
でもきっと、いつか美味しい芳香パインを食べられるのだろう。
天候もばっちりで、失敗がなければ、いつか。
そう思っていた。
でも、そういう機会はついに訪れず。
同僚が新たなパイン担当になった際の一言に、驚いたけれど頷いた自分がいた。
「芳香パインはもうだめです。台農17号一本で行くべきです。」
「温暖化によって、芳香パインが適する気候は、もう来ない」という、りょくけんとしては大きなパラダイムシフトだった。
芳香パインの打ち出しを断念し台農17号が得意とする時期だけを取り扱うことに決めた。
1月~7月くらいまで長期間扱っていたが、3~5月までに搾ったのだ。
これですべてがうまくいくと思っていた。