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産地研修2018 ~石塚さん2~

「おおー、おおー、大勢で来て!」

石塚さんも、前日は「まずいな、今は。」とおっしゃってはいたが、なんとなく嬉しそう。

笑顔を見せてくださったので、私も安心した。

「だいぶお写真と変わりましたね!」とスタッフの一人から一言。

りょくけんの媒体で公開している写真は、おそらく8年位前の写真。
久しぶりにお会いすると、それはまあ、やっぱりそれなりの変化がある。

「そうだね、年とともに、貫禄がついただよ。」と石塚さんが少しはにかみながら胸を張った。

ご主人の居たハウスには、ほうれん草が植えてある。

「ハウス内見てもよいですか?」
と遠慮がちのりょくけんスタッフを先導する。

「カラカラだ~土がカラカラだ~」
「きれい~」
「ぜんぜん虫ついてないじゃないですか!」

次々とスタッフの感想が出てくる。

「明日雨が降るから、水分は抑えてる。ほうれん草は、虫があまりつかンだよ。」
「なぜですか?」
「ほうれん草にはシュウ酸があるからかな?あんまり虫も食べん。」
「へえ~」
「でも、シュウ酸のエグミはあまり食べても感じないですよね。」
「そりゃあ、そういう工夫をしてるからね。肥料もぜんぜん違うだに。」

「葉に水がついているのはなぜですか?」
「ちょうど今、この上から葉水(はみず)をかけたところだから。」
「あ、この上にある官から出るんですね。」

「そうそう。」
「でも葉に直接水をあげたら、日焼けしちゃうのでは?」
「日焼けしん(しない)ように、葉に水を少しあげて、温度を下げる。」

ふと上を見上げると、直射日光が当たらないように、遮光する黒い細かい網がかかっていた。

「あ、遮光用の寒冷紗をつけてたんですね。」

「あ、そうだよ。でももう限界だに。この列をぜんぶとったら終わり。来週からはないからね。」

もう6月。
初夏だ。
暑い浜松では、寒冷紗や葉水をかけてほうれん草の体感温度を下げたとしても、そろそろ限界である。

4連棟のハウスは、今までほうれん草を収穫していた分が、休耕地になっていて、その向こう側には、小松菜が植えてある。

葉野菜の大変なところで、小松菜であれば30日前後で収穫できる大きさになるので、それを計算して、切れないように種まきをずらしていく。
ちょうど、小松菜の畑は、それが分かりやすくなっていて、一番手前の畝から、順番になっていた。

すなわち、一番手前の畝は、撒いたばかりで、ちょうど頭を出した1cmほどの芽があり、その隣の畝は3cmほど、さらにその隣には大きいもの、一番奥側は、今、まさに収穫中の小松菜があった。

遠くからは分からなかったが、虫食いがかなり出ている。
”今はまずい”と石塚さんが言ったのは、この畝だった。

「小松菜は、旨みがあるのか、虫がつくだよ。ほうれん草とはぜんぜん違う。」

アブラナ科の植物は、旨みが強いのか、かなり虫がつく。

「でも、小松菜は評判良いですよ~。ジュースにしたときの、エグミがぜんぜん他と違うらしいです。お客様が言ってます。」

最近では、グリーンスムージーなどがはやっているため、ご家庭でも、小松菜を原料にジュースを作る。
忙しい朝でも、気軽に野菜がとれ、実践している方が多い。

そして、その方たちが必ず購入するのが、石塚さんの小松菜。
エグミが極端に少なく、ジュースにしたときに、飲みやすい。

「そうだら~。やっぱり都会の人はジュースにするだね。」と石塚さんもにっこり。

「そういえば、あっちのハウスにはつまみ菜がありましたけど、わさび菜はやめちゃったんですか?」

「ああ、少し前にやめた。」
「そうなんですね。。」
「わさび菜はえらいだよ。やっぱりアブラナ科で、旨みがあるのか虫が寄ってくるし、薬のかからないところに卵を産みつけるだよ。」

ちょうどその前の土曜日にお客様からリクエストがあり、久しぶりに納品したかったのだが、残念。

「さ、大森くん、そろそろ。」

9時30分を回ったところで、永田さんから声がかかった。
いつまでも、農家さんと話していたいほうなので、大森は、農家さんを訪問すると、長い。
ただ、長居をすると、今日の予定は、完遂できない。

そういう意味で、永田さんのタイムキープは非常に助かった。

石塚さんの奥様と記念写真を撮り、石塚さんご本人とは「これからもよろしくお願いいたします。」と握手して、ハウスを後にした。

次は、舘山寺(かんざんじ)!