吉池さん。畑にて。持っているのは、シナノピッコロ。 |
「お世話になります。しばらくだし、会いたいね。」
デスクワークの傍ら、ずっと行きたかった長野のりんご農家さんたちにショートメールで打診。
そんな有難いお言葉をかけてくださったのは、須坂の吉池さんだった。
千曲川。西岸から東岸へ。 |
実は、成田さんの畑とは千曲川を挟んで東側と西側にある園地で、直線距離は近く、車で30分とかからない距離にある。
成田さんの畑が大きな道路に面しているのに対して、吉池さんのご自宅はやや複雑な住宅地の中に混在する。
う~ん、このあたりのはずなんだが…。
ナビに住所をダイレクトに入れても、きちんと案内されなかった。
1件1件敷地内を覗きながら、車をゆっくりと進めた。
「違うな~」
少し諦めかけて、表の通りにもう一度出ようと思ったところで、見覚えのある「き」と書かれたプラスティックコンテナが目に入った。
倉庫のような建物のシャッターも開いており、覗き込むと、同じようにこちらにじっと視線を送ってくださる方がいた。
口元も「あ、来た来た」と読み取れた。
吉池さんだ。
奥様もいらっしゃる。
青い軽トラの横にスペースがあったので、車を駐車。
商売道具のカメラと手帳をもって、飛び降りた。
ちょうど、吉池さんも車まで来てくださった。
「どうもどうも~しばらくですー。」
最後に来たのは、7年前。
ちっとも変わらない、格好いい農家さん、吉池さんがいた。
奥様もちっとも変わらない。
「ご無沙汰してます!りょくけん、大森です!」とご挨拶。
「全然変わらないですね!」
「イヤあー変わりましたよ。」と奥様。
「なんだ、お子さんも一緒かと思ったんだけど。」
確かによく一緒に畑には来ている…。
「あれ、まさかブログをお読みいただいてますか???」
「???」
「あ、なんでもないです。」
倉庫というか、選果場の中に入って、スチールの椅子に腰かけさせたいただいた。
変わらない空間があった。
「いやあ、久しぶりだね、本当に。」
「はい、おかげさまで、新入社員さんも入って、少し、外回りできるようにもなりまして。」
「へえ~何よりだね。」
「ていうか、ご予定があったのに、変更させてしまってすみません、ありがとうございます。」
吉池さんは、当日、所用があって、夕方からしか畑にはいない予定だったが、予定変更してくだり、私に時間を合わせてくださったのだ。
7年前はまだ学生で、”生意気だ”、と言って憚らなかった息子さんも3年前に実家に戻り就農した話や、気候変動で様々な変化があること、諸経費の値上がりなど、いろいろ話した。
「昔はねえ、千曲川の扇状地で肥沃なここら辺の畑でできたフジが本当に美味しいなあって感じていたんだけど、変わったよねえ。
昔は小玉しか取れなかった標高が400とか500mあるあたりの園地が、今、本当に美味しいりんごができるようになって。
標高の低いここら辺の園地でできたフジは糖度は確かにあっても、何か物足りないと思うようになった。」
手で、りんごをガブリとするジェスチャーをしながら吉池さんが言った。
気候変動で、平均気温が上がっている。
平地では、なかなか食味が上がらなくなってきた。
飯田や、須坂の平地では、気温が高く、りんごの着色が進まないことが、顕著な問題になっているのだ。
しばらく話し込んでいたら、吉池さんの携帯が鳴った。
「うん?あ~。ええ??」
電話を切るなり、楽しそうに
「ちょっと待ってて。5分で戻る。」
「え、何々?」と奥様。
「うちに来たい、というお客さんが迷ってたどり着けないんだって。ちょっと迎えに行ってくる。」とにこやかに語る吉池さん。
しばらくして吉池さんがお客様を連れて戻ってきた。
なんと、初対面の方だった。
毎年、他の方から吉池さんのりんごを贈ってもらっていて、美味しいから、旅行の帰りにぜひ立ち寄ってみたかったのだという。
「じゃあ、畑、行きますか? 大森さんも行きたいですよね?」
「はい、もちろん!」
「あ、こちら、お取引先の社長さん。」
お互い自己紹介。
「じゃあ、車で行きますので僕の車についてきてください。ここから15分くらいのところの畑に行きましょう!」
車を覗き込みながら
「大丈夫ですよね、この車、燃費よさそうだもんね。」
車に乗り込み、畑に向かうことになった。
吉池さん、本当に良い人だなあ~。
シナノピッコロ |