2月の終わりだったか、野菜業界の中で衝撃的なニュースが出回った。
老舗ブランド「大地(だいち)」と新興の雄「OISIX(おいしっくす)」の合併である。
大地さんは、学生運動に端を発した団体で、有機農法でできた野菜くだものをお客様にお届けしている。
OISIXは、東京大学に在籍時に立ち上げたベンチャー企業で、野菜くだものをお客様にお届けしている。
大地さんとりょくけんは30数年前から情報交換をしていた仲だったそうで、創業者である藤田さんとりょくけんの永田ファミリーは懇意にしていたと聞く。
OISIXさんはお取引先さんのひとつであったし、農家さんからのご紹介もあり、私も直接の面識がある。
私がこの業界に入ったきっかけであったユニクロの野菜事業「SKIP」とOISIXは同級生みたいなところもあり、情報交換も行っていた。
SKIPは解散してしまったが、OISIXさんはその後も伸び続け、打ち出しのうまさやネーミングの良さ、バイヤーの腕、経営力もあって、昨年株式の上場も果たした優良企業だ。
らでぃっしゅぼーや(大地から派生した企業)を加えた三社がこの野菜宅配業界の三強といってよいだろう。
OISIXの高島社長の言葉を借りれば、
「通信販売、野菜宅配は伸びているといわれるが、ほとんどが生協。食品に限らない利便性が尊ばれている。一方で”プレミアムな”野菜宅配業は全体シェアの数パーセントにすぎず、伸びしろがある。」
とのこと。
たしかにそうかもしれない。
この合併には二つの明らかなシナジーもある。
一つは物流である。
OISIXさんは、独自の物流を持たない。
昨今話題になるヤマト運輸さんにお客様への配送を委ねている。
一方で、大地宅配は、自らトラックを運転し、営業マンも兼ねたドライバーが各家庭を回る。
察するに、ヤマト運輸さんからの値上げ交渉も考えられるOISIXさんにとって、この物流網は魅力だろう。
二つ目は顧客層だ。
OISIXさんはインターネット販売をメインにしてきて、顧客層が若い。
30~40代のお子さんをお持ちのママさんたちをターゲットにしてきた。
対して、大地さんは、比較的年齢層が高い。
この二つの顧客層を持つ会社は、町がないなく強いだろう。
一方で、野菜くだものを供給する農家さんは複雑らしい。
二つの会社ともにお取引の経験のあった農家は、その両社の対応の違いや企業理念の違いなどに違和感を感じている。
ただ、お互いのブランド名は残すのだから、経営資源を共通にして、固定費を下げる狙いであれば、感情的になる必要はないのかもしれない。
むしろ利益率が上がってさらに収益性の良い企業になる。
昨日書いた、三越さんと伊勢丹さんの合併にも似ている。
りょくけんはりょくけんで、規模の小ささを優位と思いながら、志を持ちながらやっていきたいと思いつつ、この二社がどのように舵を取っていくのか、また注目し参考にしたい。