足元に咲くカタクリの花(齋藤さんの栗林にて)。水のきれいなところでしか咲かない。 |
2011年の春だった。
ずっと椎茸をお願いしていた福島の農家さんが被災し、新たに産地開発が必要になった。
その時に出会ったのが、秋田 西木町の齋藤さんだった。
「本業は林業、木こりだ。」
とおっしゃっていた。
原木生椎茸の原木(げんぼく)は、齋藤さん自ら山に入り切り出したものだ、と聞いてお取引を決めた。
今後、福島での放射線物質飛散の影響を受け、原木のトレーサビリティも課題になる、と考えたからだ。
田沢湖 |
田沢湖から西に十数キロの位置にあり、川が流れ、山々が連なる。
とてもきれいな場所だった。
椎茸の他、栗にも力を入れており、大粒の「西明寺栗」というホクホクと甘い栗を作っていた。
栗林に連れて行っていただくと、
「時期になると、カタクリの群生が咲いてね。とてもきれいなんだ。」
と奥さんとほほ笑む。
カタクリは、水がきれいでないと咲かない。
環境がとても良い場所だった。
ご自宅がまた素晴らしい。
齋藤さんが自身でそろえた木材で、ご自身で作った作品だ。
西明寺栗のゆで栗をご馳走になりながら、お話を伺う。
「椎茸もね、今はもう終わりの時期だけれど、『絹(きぬ)』というをやっていてね。」
品種は数字だけの特殊な菌で、冬しか作れない。
ソフトボールくらいの大きさになり、食感がとてもなめらかで、『絹』という名前を付けた。
「おい、まだ少しならあるだろ、実物をもってきて。」
と奥様に伝えて、持ち出してきてくれた。
「これはもう小さいものなんだけれど…」
手のひらくらいの大きさだった。
これはいけるかも。
焼いて食べると、食感が本当に独特で、なめらかで、美味しい。
「本業は木こりだけれど、つくってくれ、と言われれば、なんでも作るから。
なんでかわからないけれど、ここでは、何でも美味しくできるから。
野菜作り、自信があります。」
口を真一文字に結んで、強くうなづく齋藤さん。
「学生時代は東京の大学に通っていてね。」
「へえ、そうなんですか。何を勉強されていたんですか?」
「いやあ、夢を見ていた、というか。」
「?」
「美大に通って、絵を描いていたんだ。」
「へえ~」
「娘も同じ夢を見ちゃってね。今、東京の美大に通ってるんだ。」
「へえ~」
「でも、それもやめて、来年からは農業を手伝う、って言ってくれているんだよね。」
「へえ~」
にこにこと話す齋藤夫妻に、「へえ」が続いてしまった。
「絹」 |
その娘さんが、齋藤 瑠璃子さん。
今をときめく女流農家だ。
お父さんの遺志を継いで、本当に貪欲に野菜作りをしている。
「農業フォーラム」などにも呼ばれるようで、1年に数回は上京する。
―実は、明日も。
銀座店で販売に立ちたい、とのことで、11時~14時くらいまで店頭にいる。
椎茸「絹」のほか、カラフルなにんじん、長ねぎ、パクチー、ケールなどいろんな野菜を作っているので、いろいろ聞いてみてほしい。
りょくけんフェイスブック↓
https://www.facebook.com/RyokukenGinza