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ひめかみと昂林と。

自宅である浦安を午前4時前に出た。
6時35分成田発の飛行機に乗ると、北海道にも8時15分には着くことができる。
全く便利な世の中になったものだ。

札幌を抜け、小樽で高速の札樽道を降りると、やはり観光地。小樽の市街地は混んでいた。
そういえば、朝のNHKの連続テレビ小説も、余市が舞台になる。
もっと注目を浴びて混むようになるかもしれない。

安芸さんのご自宅に着くと、早速、安芸さんお手製のジンギスカン小屋に招かれた。
日曜日だったから、従業員さんはお休みで、息子さんとお二人だった。

「もう30年ちかくなるなあ。」

昔から変わらない優しい穏やかな笑みで安芸さんが言う。

安芸さんには、大変お世話になっている。
西洋梨のブランデーワイン&グランドチャンピオン※、完熟プルーン※、あかねりんご&そのジュース、ハウスで完熟したナイアガラを使ったぶどうジュース、ワインぶどうのカベルネやピノノワールのぶどうジュース。
多くは語らないが、安芸さんの作るものはどれも美味しい。信者がいるくらいだ。

とっかかりは、隣の仁木町に、永田 照喜治(てるきち)がやってきたこと。
突然やってきて、ここは絶好の場所だから、りんごを作りなさい、とその方も言われたとか。
翌年、安芸さんが紹介され、りょくけんとのお取引が始まった。

かれこれ30年になる。

「家の周りの畑で作ったほうが平地だから本当は楽なんだけどね。」
安芸さんのご自宅の周りにはハウスぶどうの畑と北海道では「ささげ」と呼ばれる平鞘のいんげんの畑がある。
少し離れた山の斜面に、りんごや露地ぶどうの畑がある。

車で上に上がっていくと、なだらかな丘陵地に美しく整備されたぶどう畑があり、次にりんご畑が広がった。

「うわあ~」

畑の向こうには、土を採取しているのか、地肌がむき出しの場所には、りょくけんが大好きな赤土の地層を目にすることができる。
上は冴え渡った秋の青空。下にはきれいに整備された草。
その空と大地の間に、赤い実をならせたりんごの木がきれいに立ち並んでいた。

「それこそね、永田さんが来られて、この赤土を見て、ここでりんごを作りなさい、ってね。
西日が当たる斜面で、水はけが良くて、風通しが良い場所でって。
でも、当初は大変で、斜面だから赤土が流れてしまって、クローバーの種をまいたりして、草を生やしてね。
3年くらいかかったかなあ。
さっきも言ったかもしれないけれど、平地と山では味が全然違ってね。大変だし、収穫量も落ちるんだけど、山で作ったほうが断然美味しくてね。」

クローバーなどの葉。余計な栄養分を吸い、枯れると土に帰る

「今年のあかねは良い出来だったんじゃないかな。」

もう収穫の終わったあかねの木の列を見ながら、安芸さんがつぶやいた。
銀座店でも、通販でもほぼ終売のあかねりんご。真っ赤に着色したあまずっぱいりんごで、りょくけんのロングセラーだ。
まもなく、ジュースも仕上がって、納品される予定だ。

そのあかねの後ろに、ひめかみの木が並び、さらにもう一列後ろに、昂林の木が並ぶ。

真っ赤に熟したりんごの木は、本当に美しい。

安芸さんが落果したひめかみを拾い上げ、手で割って差し出してくれた。

ひめかみは、岩手県で生まれた品種で、姫神山にちなんで名づけられた。
親がフジと紅玉。甘いりんごの代表格とすっぱいりんごの代表格の掛け合わせ。
りんごのサラブレッドと言っても良いかもしれない。

親の性質をしっかりと受け止めて、しっかりとした果肉で、蜜がたっぷりと入り、ほのかに酸味があり、糖度が高くて、香りがある。

本当に美味しい。条件が整った時のひめかみは、パイナップルにも似た風味も持つくらいだ。

「まだもう少しおいてから収穫するつもりだから。」

安芸さんは熟度のマイスター。本当に熟度をあげてから収穫する。

「これだけたくさんある中で、安芸さんが一番好きなりんごはなんですか?」

「それは、やっぱり昂林だね。」

昂林(こうりん)は、最初、フジと王林の掛け合わせとみられていたが、最近になって、フジの枝変わりであることが分かった。
単に、”早生フジ”の一つととらえる販売店も少なくない。

北海道の気候に合致したのか、ひめかみ同様、しっかりした果肉で、蜜が入り、糖度が高く、香りも強い。
実は、銀座店で、もっとも人気があるりんご。販売スタッフさんも大好きなりんごだ。
付け加えておくと、ひめかみは、商品を担当してきた面々が大好きだ。やや玄人受けするのだろうか。
いずれにせよ、間違いなく二品種ともに、りょくけんのりんごを代表する品種になりつつある。

「あとは…本当はこれだけ広い面積をやっているから、除草剤を許してもらえると嬉しいんだけどね。」
半ばあきらめも含めながらつぶやく。

「すみません、不使用でお願いいたします…。」と頭を下げた。

「お。」

昂林の後ろの列の木のてっぺんのほうに一つだけりんごがなっていたのを安芸さんが見つけた。

「これ食べてみて。」

とまた割ってくれた。
程よい酸味があり、紅玉にも似ていて美味しい。

「『旭(あさひ)』という品種で、もとの英名がマッキントッシュっていうんだ。」

例のコンピューター会社のコンピュータの名前の元になったりんごだ。

「自分の奥さんのために4本だけとってあるりんごでね。冬中、奥さんはこれを食べてる。」

今年は、この奥さんのりんごを少しだけ分けていただくことにした。
旭は、カナダ原産のりんごで、明治時代に日本に持ち込まれた後、まったく品種改良されずにいる古い品種だ。皮が薄く、丸かじりに向く。また、香りがとても良い。

たくさんあるりんご。ぜひ、いっぱい試してみてほしい。

■あかねりんご 北海道産 1玉 237円(税込)~





■ひめかみりんご 北海道産 1玉 324円(税込)より /通販 約3㎏(10玉前後)3,564円(税込)



■昂林りんご 北海道産 1玉 324円(税込)より /通販 約3㎏(10玉前後) 3,564円(税込)



■あさひ 北海道産 1玉 324円(税込)より


※安芸さんの西洋梨は、2013年に胴枯れ病により木を切って終売いたしました。