相模灘を見渡すことのできる青木さんの畑。
運がよければ、海に浮かぶ富士山を望むことができる。
葉がだいぶぼろぼろになるが、冬の風に当たり、大根がとても味がのってきた。
肥料は夏に育てた作物の残肥でほぼまかなえる。潮風が海から運ぶ天然のミネラルが、連作障害を防ぎ、土に適度な微量栄養素を補う。
水にもこだわりがある。
「畑にやるのも、洗うのも、この水以外は使わねぇよ。」
青木さんは地下水を各畑に引き込み、灌水を行う。この水に溶け込んだミネラルもまた、青木さんの畑の産物の美味しさの秘密なのだろう。
そんな恵まれた土地柄の三浦にあって、今年の最大の敵は旱魃(かんばつ)だった。雨が降らず、畑が乾いた。朝夕とたっぷり水をやっても、土が乾き、固く締まっていくのだという。夏ならともかく、冬には珍しい現象だった。
ただ、生長が遅れた分、味はよくのっていて、甘みが強い。
品種にもこだわりがある。
「品種?品種にもこだわってるよ。タネ屋がもうつくらねぇって言うから、残り全部買い占めたんだ。あとまだ何年か分はあるよ。」
青木さんがにやりと笑う。カチカチの肌が、いかにも農家らしい。
緻密でやわらかく、甘みの強い青木さんの大根。
今日、春一番が関東では吹き荒れたと聞く。春は誰もが焦がれる季節だが、今しばらく、この、冬の絶品を、味わっていたい。
■大根 神奈川県産 1本347円 ~3月末ごろまで。4月からは、春大根が始まる予定。