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ゆりね と くわい。

「正月野菜」と呼ばれる野菜がある。おせち料理に使われる野菜で、八頭や金時にんじんなどがあり、その時期に旬であるばかりでなく、いわゆる縁起がよく、それぞれにいわれがある。たとえば、八頭であれば、親芋に子芋がたくさんつくので、子孫繁栄だとか、れんこんは穴が通っているから、先が見通せる等等。

ゆりね(百合根)とくわい(慈姑)も、正月野菜だ。年末には必ずお問い合わせいただいてた商材だ。

今年は北海道のゆりねと石川県のくわいを取り扱う。

良いゆりねとくわいを手に入れたい、と思ったのは、それ自体を、恥ずかしながら今年初めて食べ、「美味しい」と思ったからである。両者ともほくほくしていて、甘みがあり、ただ塩を振って焼いただけでも美味しい。

ゆりねは、北海道のニセコに求めた。ニセコの奥のほうに行くと、赤土土壌で、じゃがいもの美味しい場所がある。ゆりねも根野菜だから、じゃがいもが美味しい場所では、共通して良いものが取れるからだ。

多くの野菜が、2~3ヶ月で収穫できるが、ゆりねは、そうは行かない。特に、雪深い北海道では、一年かかる。雪が降る前に植えつけなければならないからだ。毎年、この時期には、収穫するのと同時に、来年分の株を植えつけなければならない。畑が二枚必要になるので、効率の悪い野菜と言えよう。面積が必要だから、生産量のほとんどを北海道が負っているのかもしれない。ただし、この長い栽培期間が美味しさの秘密だ。

農協では、共選になるから、個人の農家さんを指定して購入はできないが、トマトの契約農家さんのツテを頼り、とても良いものを手に入れることができた。ずっしりした重量感、ホクホクの食感、甘み、ねっとりした後味※。他の野菜にはない、面白さがある。

PA273374.jpg この根元に「くわい」がなる。

くわいは、埼玉や広島がその生産量のほとんどをまかなう。くわいについては、大産地ではなく、石川県の羽咋(はくい)という場所に求めた。もともとは加賀の伝統野菜のひとつだったようだが、後継者が不足し、なんとか栽培を続けさせようと、種を別の場所に持ち込み、栽培が継続された。それが羽咋の神子原(みこはら)地区である。そばと稲作が盛んで、棚田がとても美しいところだ。

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稲の田んぼの間を縫って、くわいが栽培されている。私が訪ねたころは、まだ葉は青々としていたが、収穫時には、茶色に枯れて行く。それが完熟した状態だ。こちらも根野菜。ホクホクしていて、甘みがあり、ちょこんと顔を出した芽も食べられる。水にさらしてあくを抜くらしいが、このくわいはあまりあくが無い。正月はもっぱら煮物にされるが、揚げ物や、焼いただけでもうまい。

どちらも、年末年始限定。売切御免の食材だ。お見逃し無く。

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■ゆりね 北海道 100gあたり263円…おおよそ1玉300円くらい。 …燐片が重なり合うようにたくさん付いていることから、「子孫繁栄」の願いがこめられている。古名を、「佐葦(さい)」といい、「賽(さい)の河原」の意味をかけ、天上の扉を開くとも信じられている。

■神子原くわい 石川県 100gあたり、315円…5玉ほど入って、400円くらい。 …芽がでているため、「芽が出る」とされ、縁起が良い。

 ※ゆり根のねっとり感は、食物繊維のひとつである「マンナン」による。こんにゃく芋にも含まれ、ゼリーなどにも応用された成分だ。