りょくけん東京

りょくけんだより
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あやめ雪。美味でお洒落な かぶ の話。

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小さい時、母がつくってくれた味噌汁に、よく、かぶが入っていた。大根のようでいて、まるでそれとは異なる中途半端な食感。歯と歯の間に絡むスジ。どちらかというと、あまり良い印象ではなかった。

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そんな印象は、(株)りょくけんに入社して一変した。

「かぶ」って美味しい。

生で食べると、ソフトな食感で、甘みがある。火を通せば、形は崩れないのに、とろとろの食感になる。塩もみはいわずもがな。きゅうりのように味噌をつけても美味しい。

シーズンを前に、作付の計画を練る。どの場所の、どの農家さんに、どの時期につくっていただこうか考えていた。9~10月は北海道。11月からは…。

かぶは、アブラナ科の植物。原生地は、ドーバー海峡や地中海沿岸とされる。海沿いの潮風が吹き込むようなところが好適。そうであれば、神奈川、三浦半島の青木さんが良いに違いない。早速、東銀座から電車に乗り、三崎口に向かった。

三浦では珍しく、冷たい雨が降る日だったが、冬から春にかけての作付けを腰をすえて相談するには良い日だった。丸いテーブルを、青木さん、奥さん、娘のキミさんで囲み、話を進めた。

ayame (1).jpg 2004年2月撮影

青木家は、三浦半島の南端に位置し、城ヶ島が目の前だ。神奈川を含め、関東平野のほとんどが火山灰に覆われ、りょくけんが好む土質ではない※のだが、三浦は特殊で、古い地層が隆起した赤土の場所が多く、青木家の畑もその地域に点在する。畑からは、相模湾が見え、天気の良い日には、その相模湾の上に美しい富士山が姿を見せる。その富士山が好きで、青木家に通う写真家もいらしたのだとか。

三浦はほとんど雨が降らず、きわめて晴天率が高いのだが、日ごろの行いが悪いためか、まだ私はそのありがたい姿を拝んだことがない。。。

ayame.jpg 3人娘の強き母で、大根・キャベツ以外担当のキミさん。

「来る時、いつも雨だよね!」とキミさんが笑う。

「―えっと、冬作ですが、例年通り、キャベツと大根をメインに、かぶもやってほしいんですよね。」と切り出すと、

「かぶ?かぶならもう植えたよ。11月には出せるよ。」と青木さんが涼しい顔で言う。

話が早い。

ayame (5).jpg 青木家の大黒柱 青木さん。

「それとこんな色のあるものも作って欲しいんですけれど?」と、事前に調べておいた種の写真を見せた。

「ン? こんなのより、ほら、あれ。『あやめ』のほうがいいべ。」

茅ヶ崎出身の私にとって、この、青木さんの「~べ。」は、たまらなく懐かしい。

「上が紫で、下が白の、それこそ、『かぶ』だよ。あれは、きれいだべ。」と種苗会社の写真を見せてくれた。「あやめ雪蕪(あやめゆきかぶ)」。まるでイタリア野菜の Rapa(ラーパ)※ のようにきれいなコントラストのかぶだ。

ayame (4).jpg 土から上が赤く、下が白に。

しばらくの間、ああでもない、こうでもないと、冬春作の依頼と確認を繰り返し、情報交換を終えて、青木家を出発した。あたりは暗かったが、なんだかワクワクしていた。青木家は除草剤も使わないし、肥料もごくわずか。連作するが、土壌障害もほとんど出ない。潮風が海から運ぶミネラルの恩恵なのだとか。特に、ポリフェノール系の色がある野菜を、とてもきれいに仕上げてくださる農家さんなので、出来上がりが楽しみだった。

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��0月の終わりごろになって、キミさんから連絡があった。青木家の「大根キャベツ以外の野菜」担当に、正式に就任したのだという。

「『あやめ』が少し取れそうなんで、サンプル送りますね。」

まずは池袋店に送り、味を見てもらった。副店長が、青木家のファンだからだ。

「『あやめゆき』良いですね~さすが青木さん。かぶというより大根の風味にも似ていて、甘みの中に、ほのかに感じる辛味も良いですねえ。」と副店長。

一足先に、池袋店での取り扱いを始めた※。紫と白のコントラストが美しく、肉質が緻密なのにやわらかい。味と美しさを兼ね備えた、文字通り、才色兼備のかぶだ。

販売スタッフにもお客様にも大変好評。先々週一週間だけ、作型が空いてしまったが、だんだんと回復し、今は量も増えて、銀座店でも販売している。

冬に向かい、いっそう美しく、より美味しくなっていく。

■かぶ(あやめゆき) 神奈川県 青木 喜一さん 1束 315円前後 ~3月

■白かぶ 同上 1束 263円前後 ~3月

■かぶと生姜のコールスロー  池袋限定メニュー

■香ばしかぶとしいたけのサラダ  池袋限定メニュー

■紅芯大根…12月上旬~、大根、キャベツは2月ごろから開始予定。

※火山灰で出来た土壌は、肥沃なため、収穫量が多く、きれいな作物がとれるが、味は乗り切らない、というのが、りょくけんのスタンス。三浦は赤土。浜松などの土目に比べると、ふわっとして軽くやわらかい土質。

※Rapa …文字通り、イタリア語で「かぶ」。

 rapa.png ※出典【イタリア野菜の種】ナチュラルハーベスト http://www.natural-harvest.net/vegetable03.html

※池袋店では青果の取り扱いをお休みしていましたが、少しずつ再開しております。