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神話の国から次世代のレタス「サラノバ」。

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「初めて見たときな、『なんや山ちゃん、この、花みたいにきれいなレタスは!』って言うたんや。」

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朝早く、東京駅を出た。

のぞみに乗り込むと、あっという間に名古屋駅に着いた。近鉄に乗り換えて、しばらくすると、三重県に入る。名張(なばり)という駅で降りる。山浦さんが笑顔で待っていてくれていた。

朝は気にならなかったが、割とひんやりとする。山浦さんも長袖のトレーナーを着込んでいた。軽のワンボックスカーで名張市街を抜け、山道に入る。青蓮寺湖の湖畔を通り、そこから流れる川沿いを走ること30分ほど。谷間にある山浦さん宅に着いた。

奈良県御杖村(みつえむら)。標高300~500mに位置する、山々に囲まれた村だ。

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神話の時代、ヤマトヒメノミコトが、自分達の祖で、神であるアマテラスオオミカミを祀るにふさわしい地を求め、旅していた時に、この村を訪れ、その候補地として自分の杖を置いていったと言う。結局は、その先の伊勢(三重県)に、伊勢神宮が建てられるわけだが、その逸話が、村の名前の由来となっている。伊勢神宮に通ずる伊勢本街道が、御杖村を横断している。そう聞くと、確かに、山浦さん宅までの道のりは、とても神秘的な雰囲気だったのが思い出される。吸い込まれるような針葉樹林が道の両脇に広がり、美しい湖に、大きな岩がゴロゴロと転がる川。宮崎県の高千穂峡のような雰囲気があった。

PA202873.jpg 軒先にあった苗。すべてレタス。

山浦さんの家の軒先に、いろいろなレタスの苗があったので、しばらく見とれていると、続々とメンバーが到着した。釜谷さんと大澤さん、遅れて平畠さん。山浦さんを加えたこの4名が、奥宇陀蔬菜研究会※のメンバーだ。

PA202920 kirinuki.jpg 奥宇陀蔬菜研究会の「手」

リーダー格の釜谷さんは理論派で、果菜類を主に作っている。釜谷さんの家の近くで、レストランの顧客を多く抱える大澤さんも果菜が中心だ。新しいもの好きの山浦さんが、大阪の展示会で出会ったのが、このサラノバレタス。まさに次代を担うレタスだ。山浦さんがそのレタスを、初めて釜谷さんに見せた時、「なんてキレイなレタスや。」と釜谷さんは感嘆したのだという。4人の中で最も若く、最大の畑面積を持つのが平畠さん。6月に訪れた時は、「たくさんの野菜の種類を作るか、レタスに注力するか、迷ってるんですわ。」と言っていたが、今は、親に他の品目を任せ、自分はサラノバレタスの管理に集中しているのだという。もし仮に、私どもの活動が、微力ながらもその一助になっていたとするのならば、とても嬉しいことだと思う。

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左から、釜谷さん、山浦さん、大澤さん、平畠さん(撮影は2010年6月)。

サラノバレタス※は、オランダの種苗会社が育成した品種郡の商標で、その種類は、40種以上に及ぶ。サラダ菜タイプ、切り葉タイプ、その中間、それぞれの赤品種、緑品種、耐暑性や抽苔性※がある、ない、など。一様に、葉牡丹のような美しさと面白さがあり、一箇所=芯の部分さえカットすれば、ベビーリーフサイズの葉が多数とれるという手軽さがウリだ。何よりも、さくさくした歯ざわりや食味の良さが、当社を惹きつける点だ。すでにヨーロッパでは主流なのだとか。

神話のようなこの村に、この最先端のレタスを、熱い心で作っている方たちがいるのも、なんだかウキウキする。

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しばらく4人の農業談義を聞いた後、畑に行った。

サラノバの畑は、まさに、花畑のよう。ハウスの中はきれいに整備されており、白のマルチに色とりどりのサラノバレタスが美しく植えられている。畑がそのままサラダになりそう。日本でも、水耕栽培で作る方が増えている。水耕は、出荷が安定し、土が入らないので、ほぼ水洗いせずに、サラダにできるメリットがある。一般的に、土で作った場合、どうしても葉と葉の間に土が入り込む。ところが、山浦さんたちのサラノバは、不思議なほど土が入っていない。土が入り込んでいると、土を落とすために、洗浄をたくさん行う必要があるが、洗えば洗うほど、味や栄養が流れてしまう。それではもったいない。

「土が入っていないほうがやっぱり良いですか?」と平畠さん。「洗う回数が少ないほど、味が守られるので、そのほうが絶対良いですよ。せっかく土で作っているんですから。」

お店に届いている商品の梱包。畑同様、とても丁寧できれいだ。山浦さんたちの愛情を強く感じさせられる。10月から11月は、特に色がよく出ている時期で、味も良い。

生産者自身が感嘆してしまうほど、きれいなレタスたち。店頭でも常に数種類あるので、ぜひそれぞれのタイプを試していただければと思う。

■サラノバレタス 奈良県 奥宇陀蔬菜研究会(山浦 康二さん他3名) 10月~翌6月まで

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 【サラダ菜タイプ】 葉が大きく、味が濃厚。赤種もある(冒頭の右写真)。

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 【オークリーフタイプ】 刻みが大きく、葉が大きい。赤種もある(冒頭の左写真)。

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 【刻み葉タイプ】 ブーケレタスやフリルレタスに近い。

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 【刻み葉タイプの赤種】 やや苦味がある。11月はもっと色が濃厚できれい。

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 【フリルタイプ】 刻みが深く、サクサクした歯ごたえがあり、甘みが強い。

こちらに「バタビアタイプ」(サラダ菜タイプよりも葉が細かい)が加わり、3系統(サラダ菜タイプ、オークレタスタイプ、刻み葉タイプ)×2色(緑、赤)+2系統(フリルタイプ、バタビアタイプ)で、計8系統の品種郡がある。

 ※奥宇陀蔬菜研究会 …旧宇陀郡の中で御杖村と曽爾村が、現在の宇陀市に合併しなかった。そのため、奥宇陀という名称をつけている。蔬菜(そさい)は、専門用語で野菜のこと。

 ※サラノバレタス …オランダの種苗会社「Rijk Zwaan(ライク ズワーン)」社が開発したレタスの品種郡、およびその商標。サラダ革新=Salad Inovation が名前の由来。 cf. salanova.com

 ※抽苔性 …ちゅうたいせい は園芸用語で、トウ立ちとも言う。花芽が出ること。日が長くなったり、暖かくなったりすると、茎が伸びて花を咲かせる準備に入る。総じて、抽苔が始まると、葉が固くなり、苦味が出て品質が落ちる。